日本住宅ローン株式会社 様
モダナイズを進めつつDXも加速させる
日本住宅ローンが選択した新手法とは

モーゲージバンク大手の日本住宅ローンはデジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、システムのモダナイゼーションを推進している。そのプロジェクトで大きなハードルとなるのがデータの移行だ。新旧システムに分散するデータの管理や集約は容易なことではない。そこで同社では「LaKeel(ラキール)」シリーズを採用。新たな手法を用いてモダナイゼーションを進めつつ、DXのシフトチェンジも加速させている。ここではその新手法の具体的な実現手段について紹介したい。
- 目次
モダナイゼーション手法に“第三の選択肢”
“2025年の崖”が目前に迫っている。レガシーシステムを抱える企業にとって、そのモダナイゼーションは喫緊の課題だ。レガシーのままではDXも思うように進まない。
モダナイゼーションには大きく2つの方法がある。1つはビッグバン方式。古いシステムを捨て、新しいシステムに一括で置き換える方式だ。移行後は一新されたシステムでデジタル化を推進できるが、リスクを伴うためプロジェクトは長期化する。移行のために長時間システムを停止する必要があり、ビジネスへの影響も避けられない。
もう1つは段階的移行方式だ。これは古いシステムから新しいシステムへと段階的に移行していくもの。ビッグバン方式よりリスクを抑えた移行が可能だが、古いシステムと新しいシステムが一時的に共存するため、運用が煩雑になる。段階的に進めるため、各システムの検証や連携確認が都度発生し、手間とコストもかかる。
そうした中、第三の選択肢を用いてモダナイゼーションを推進しているのが、モーゲージバンク大手の日本住宅ローンだ。積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業、セキスイハイムの4大ハウスメーカーと三菱HCキャピタルの共同出資により2003年5月に誕生した住宅ローン専門の金融機関である。
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| 住宅金融支援機構と提携する全期間固定金利の「フラット35」をはじめ、変動金利型ローン、リバースモーゲージ、リフォームローン、住宅ローンの借換など幅広い商品・サービスを提供する。「人生最大の買い物ともいえるマイホームを安心して購入いただくために、長期にわたって安心できるローンを提供しています」と同社 執行役の加藤 教幸氏は話す。 同社はモダナイゼーションをDX推進のための基盤作りと位置付ける。その理由について加藤氏は次のように述べる。「安心してマイホームを購入いただくためには、社会・経済環境の変化、価値観の多様化などに対応し、お客様のニーズにマッチした選択肢を提供することが大切です。いかにお客様が求める商品やサービスをスピーディに提供していくか。その実現に向けて、最新技術やデータを活用したDXは不可欠な取り組みなのです」。 |
日本住宅ローン株式会社
執行役
加藤 教幸氏
新旧システムに分散するデータの集約が大きなネック
同社がDXを重視するのは、こうしたビジネス戦略と密接に関係しているからだ。「当社にとってITはビジネスを支える重要な柱です。金融機関がITを活用しているのではなく、IT会社が金融サービスを提供している。そういう気概を持って、ITありきのビジネスを展開しています。経営トップがITやデジタルの重要性を強く認識し、そのビジネス活用を推進しているのです」と同社の榎本 令氏は説明する。
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社内業務にもITとデータを積極活用している。経営トップが打ち出したRPAの活用はその象徴だ。全社員がシナリオを最低1個は作り、全ての部署がその成果を半年ごとに発表しているという。「一部のエキスパートによる活動ではなく、全社員がテクノロジーを使いこなし、より大きな成果につなげていく。こうした方針のもと、自動化できることは自動化を推し進め、業務の効率化と生産性向上に取り組んでいます」と同社の中井 眞士氏は話す。
こうした取り組みを加速させるため、同社は2022年より既存システムをクラウド化するモダナイゼーションに着手した。従来はオンプレミスでシステムを構築・運用していたが、その運用負荷やメンテナンスコストが増大していたからだ。新たなテクノロジーのキャッチアップも難しく、DXへのシフトチェンジも進まない。
モダナイゼーションは段階的移行手法を採用したが、ここで重大な課題に直面した。移行期におけるデータ管理の手間とリスクだ。オンプレミスの基幹系および周辺システムのほとんどはクラウドに移行したが、紙の帳票が必要な業務システムやデータはオンプレミスに残っている。最終的にはすべてのシステムをクラウド化する計画だが、クラウドとオンプレミスの両方で同じデータを二重管理したり、別名で同じデータを保持したりしているケースがある。その整合性チェックやデータのメンテナンスは不可欠の作業だ。オンプレミスにあるデータをクラウドで分析したい場合もデータの移行が必要になる。
これらの作業はすべて手作業で行っていたため、効率が悪い。漏れやミスで不整合が発生するリスクもある。「このままでは当社が求めるスピード、品質でサービスを開発することができない。トップの強い要請もあり、ゼロベースで既存のデータ環境を見直すことにしたのです」と加藤氏は経緯を述べる。
※https://www.mc-j.co.jp/wp-content/uploads/2022/12/p2_161101123349.pdf
データハブのコア基盤にLaKeel Data Insightを採用
モダナイゼーションを進める中で、DXの要ともいえるデータをどう管理し、活用できるようにするか。この課題を解決するため、同社が実現を目指したのがハブ・アンド・スポーク型のデータハブ基盤だ。これが冒頭で触れた“第三の選択肢”である。
システム同士を直接つなぐメッシュ型の構成は連携経路が複雑になり、経路の数だけシステムの改修が必要になる。作業工数やコストもかかる上、改修・連携ミスなどのリスクもある。ハブ・アンド・スポーク型は各システムをハブにつなぐだけなので、こうした手間やリスクの心配がない。
これを実現するために採用した製品が、ラキールのデータ分析・統合管理プラットフォーム「LaKeel Data Insight」とアプリケーション開発・運用プラットフォーム「LaKeel DX」である(図)。LaKeel DXはマイクロサービスアーキテクチャを採用し、一つひとつの機能を部品化し、それらを組み合わせてアプリケーションを構築できる。LaKeel Data Insightはマイクロサービス型のアプリケーションと組み合わせることで、データ変更などをトリガーとしたイベントドリブンな業務処理ができ、ふたつのプロダクトが揃うことで、利用者の生産性は飛躍する。
図 日本住宅ローンの新システム概要
LaKeel Data InsightとLaKeel DXを活用したデータハブ基盤を構築。この基盤により、分散するデータの集約と活用が可能となり、DX推進とモダナイゼーションを加速。また、ハブ・アンド・スポーク型の構成を採用することで、システム間の連携を容易にすることで、データ管理の効率化とリスクの低減を実現する
導入にあたっては複数ベンダーの製品を検討したが、システムの複雑さに二の足を踏むベンダーがほとんどだったという。「当社のコンセプトをすべて実現できるパートナーとして、最終的にラキールを選定させていただきました。基盤を提供するだけでなく、その基盤をラキール自身が利用して構築したサービスやツールが豊富に揃っていて、十分な実績があることも大きな決め手になりました」(榎本氏)。
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| LaKeel Data Insightは多様なAPIを実装し、組織内に分散するデータやファイル、アプリケーションなどを容易につなぐことができる。「ハブ・アンド・スポーク型のデータハブ構想を考えていた当社にとって、LaKeel Data Insightは最適な製品だったのです」と中井氏は続ける。 |
日本住宅ローン株式会社
システム開発部 次長
中井 眞士氏
LaKeel DXはそのデータを活用したアプリケーションの開発・運用基盤として活用する。ソフトウェア部品を組み合わせたり、再利用したりすることでアプリケーションを容易に開発できるのが特徴だ。高度なプログラミングの知識・スキルは必要ない。一度作った部品は蓄積されるので、全て一から作る必要がなく、開発スピードも向上する。事業部門でもアプリケーションの開発が可能になり、現場主導のDXを加速できる。
「任せられるところはLaKeel製品に任せることで、自分たちの強みを生かしたサービスの開発や改善に注力できる。データの管理や集約の課題を解決できるだけでなく、その先のDXを加速させることができる。そこに大きな魅力を感じました」と中井氏は語る。
現場主導のDXでデータドリブンなビジネスを推進する
LaKeel Data Insightを活用したデータハブの構築プロジェクトは2024年2月よりスタートした。既にテストフェーズに入っており、LaKeel DXで構築した新たな金融サービスは2025年春にリリースする予定だ。
モダナイゼーションも段階的に進めていく。オンプレミスに一部残るシステムも順次クラウドへ移行し、最終的にシステムの完全クラウド化を目指す。
段階的移行の場合、新旧システムに分散するデータ管理が大きな課題だったが、データハブを整備することで、この課題は解消した。システムのモダナイゼーションに先駆けてデータの集約基盤が完成した形だ。このデータハブが同社のデータ活用を支える基盤となる。
APIで容易に連携できるため、システム移行に伴うデータのダウンタイムも極小化できる。新たなシステムが追加されても、ハブにつなぐだけで連携でき、データの集約が可能だ。「使いたいデータはLaKeel Data Insight上にある。オンプレミスからクラウドにデータを移行するといった手間とリスクの大きい作業をすることなく、データの活用が可能です」と榎本氏はメリットを述べる。
LaKeel Data Insightを活用してデータ分析を進め、顧客ニーズの把握や新商品開発に役立てていく。そこにLaKeel DXを活用し、現場主導のアプリケーション開発も進めていく。「データを使って短いサイクルでアプリケーションを開発する。その好循環によってデータドリブンなビジネスが加速するものと期待しています。顧客ニーズを捉えた新たな商品やサービスもよりスピーディに提供できるでしょう」と加藤氏は期待を込める。
日本住宅ローンは今後も住宅ローン専門の金融機関として信頼性と利便性の高いローン商品やサービスの提供に努め、住宅取得という「夢」の実現に大きく貢献していく考えだ。
日経BPの許可により「日経クロステック special2024年12月16日」に掲載された広告を抜粋したものです。禁無断転載

