データハブとは?データハブを活用した段階的なシステム移行のメリットや従来の移行方法との違いも解説
新しいシステムへの移行を検討する際、多くの企業が「レガシーシステムを置き換えるのは難しい」「移行にかかるコストが高すぎる」といった課題に直面します。特に、一度にすべてを切り替える方法ではシステムの停止時間が長くなり、移行に踏み切れないケースも少なくありません。
そこで最近注目されているのが、「データハブ」を活用した段階的なシステム移行です。
本記事では、データハブのメリットや従来の方法との違い、そしてどのような企業に向いているのかを解説します。
- 目次
データハブとは
部門ごとにそれぞれ異なるシステムを利用する場合、「サイロ化(データの孤立)」が発生しやすくなります。システムを連携するにしても高額な改修費用がかかるだけでなく、システム全体が複雑化し、運用面でのリスクが増大する傾向にあります。
こうした課題を解決する手段として注目されているのが「データハブ(HUB)」です。
データハブは企業内外のデータを一元管理するプラットフォームですが、機能はデータの集約だけにとどまりません。収集したデータをクレンジング(正確性の向上)し、さらに可視化することでデータを最大限に活用できます。
データハブを導入することでデータを活用する業務の効率化や部門間の連携強化が図れるだけでなく、データドリブン経営を推進し迅速な意思決定が可能となり、競争力の強化にもつながるのです。
データハブが注目される背景、理由
システム移行にはいくつかの方法がありますが、近年特に注目を集めているのがデータハブです。その背景には、レガシーシステムの存在があります。
レガシーシステムとは、新たな技術の登場によって相対的に古くなってしまったコンピューターシステムを指します。長年使い続ける中で繰り返し修正が行われた結果、構造が複雑化し、時にはブラックボックス化してしまうケースも少なくありません。
そのため、システム移行を検討していても、レガシーシステム全てを刷新するのは難しいのが現状です。
多くの企業では、レガシーシステムの一部機能をパッケージ製品やSaaS製品に置き換えることで対応してきました。しかし事業運営の核となる特定の業務やデータは依然としてレガシーシステムに残されており、これがデータの分断を引き起こし、データ活用の妨げとなっています。
データハブは分散したデータを一元的に管理する仕組みであり、パッケージやSaaS製品とも容易に連携できます。これにより、大量のデータを効率的に蓄積・統合し、社内外でのデータ共有がスムーズに行えるでしょう。
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データハブを活用した段階的システム移行とは
データハブを活用したシステム移行では、「ハブ・アンド・スポーク型」という方式が採用されます。「ハブ」とは自転車のタイヤなどの中心部を指し、「スポーク」は中心軸と外側の輪を繋ぐ棒を表しています。
つまり、データハブが情報の集約と統合の役割を担い、周囲の各システムと効率的にデータを連携するのです。
「ハブ・アンド・スポーク型」の大きな特徴は、段階的に移行を進められる点です。
例えば、上図のように新たなSaaSとデータ連携が必要になった場合も、スポークとなる新たなSaaSとハブの連携作業のみを考慮すればよいため、作業範囲を限定できます。また、既存システムを切り替える場合も、最小単位で移行作業を進めることができるため、数時間から1日程度の短いシステム停止を繰り返すだけで移行を完了できます。これにより、業務への影響を最小限に抑えつつ、移行コストとエラー発生のリスクを大幅に軽減することが可能です。
さらに、データハブの活用により、システム全体がシンプルでありながら柔軟性も向上します。システム間の連携コストを削減し、データ不整合などのトラブルを減らせるため、データ活用もスムーズに行えるようになります。
データハブを活用した段階的な移行方式は、リスクを抑えつつ効率よく進めたい企業に最適と言えるでしょう。
従来のシステム移行方式との違い
主なシステム移行方式として、「一括移行方式(ビッグバン移行方式)」と「従来の段階的移行方式(メッシュ型)」の2種類が挙げられます。ハブ・アンド・スポーク型を含めたそれぞれの特徴・メリット・デメリットを下表に整理しました。
ビックバン移行方式 | メッシュ型 | ハブ・アンド・スポーク型 | |
特徴 |
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メリット |
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デメリット |
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ビックバン移行方式、メッシュ型の特徴を解説します。
一括移行方式(ビッグバン移行方式)
一括移行方式(ビッグバン移行方式)は古いシステムを完全に停止させ、一度に新システムへ切り替える方法です。
この方式では、事前に運用ルールを整理・共有しておけば、移行コスト削減や業務スピードの向上といったメリットがあります。
しかし、切り替え時には長時間システムを停止しなければならず、導入後に予期せぬ課題が発覚する可能性もあり、事業運営に深刻な影響を及ぼすことも考えられます。
従来の段階的移行方式(メッシュ型)
従来の段階的移行方式(メッシュ型)は、古いシステムの一部から順次、新システムへ移行する方法です。システム移行を部分的に進めるため、発生した問題に対応しやすく、改善や再検討を行うことができます。リスクを低減しながら移行を進めることが可能な方式です。
しかし、移行期間中は古いシステムと新しいシステムが一時的に共存するため、運用が複雑化しやすい点が挙げられます。また、各段階でシステム連携の確認や調整を繰り返すことになるため、作業工数が増えてコストが高くなる傾向もあります。
データハブを活用したシステム移行のメリット
先述の通り、システム移行の際にデータハブを活用する企業が増えています。以下に具体的なメリットをご説明します。
システム停止期間が短い
一括移行方式ではシステム全体を長時間停止させる必要があり、その間は業務が滞ることになります。夜間でも稼働が求められる企業などでは、この方式を実行するのは非常に困難でしょう。
しかし、データハブを活用すれば、部分ごとの切り替えが可能になります。システム停止期間は数時間から1日程度と短いため、業務への影響を最小限に抑えられるのです。
トラブル発生のリスクが減る
従来の移行方式では、異なるシステム間でデータの不整合が発生しやすく、その結果、業務トラブルや追加コストを招くリスクがありました。一方、データハブを中心に据えることで、移行中もデータを統合的に管理することが可能です。
例えば、本社と現場で入力ルールが異なる場合、「全角と半角の混在」や「正式名称と通称の混在」といった違いがデータ間で発生しがちです。データハブにはデータクレンジング機能が備わっており、不正確なデータを修正・削除します。
これにより、データ不整合が原因で生じるトラブル対応にかかるコストと時間を大幅に削減でき、データの信頼性も向上させることができます。
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連携作業の工数を削減する
従来の移行方式ではシステムごとに連携を構築する必要があり、時間と費用がかかってしまう点がデメリットでした。しかし、データハブを活用することで、各システムとのデータ連携が効率的かつスムーズに行えるようになります。
さらに、移行後もデータハブが中心基盤として機能し続けるため、運用効率が向上します。新たなシステムを導入する際も既存システムと簡単に統合でき、拡張や追加が容易になるため、柔軟性の高い環境を構築することが可能です。
データハブを活用したシステム移行が向いている企業
データハブを活用したシステム移行が適している企業の特徴を以下にまとめました。貴社の状況と照らし合わせてご参考ください。
既存のシステムが複雑である
特に大手企業では、古いシステム(レガシーシステム)が業務の中核を担っています。新しいパッケージソフトやSaaSを導入したくても、完全な置き換えが難しいケースが多く見られます。
さらに、新しいシステムを導入する際にはデータ連携が不可欠ですが、データの量や種類が多いと工数も増大してしまいます。
データハブであれば、既存のシステムを維持しながら新しいシステムとスムーズに連携可能なため、膨大なデータも一元化できるでしょう。
長時間システムを停止できない
金融業界や医療業界のように長時間のシステム停止が許されない業種でも、データハブは効果的です。
短期間のシステム停止を繰り返す形で進めることができるため、業務への影響を抑えながらシステム切り替えを実現できます。
移行リスクを抑えたい
システム移行には、予期せぬトラブルが発生するリスクも伴います。データハブは段階的な移行方式を採用しているため、万が一問題が発生しても影響範囲は少なく、迅速に調整できます。
結果的に、追加コストや業務の長時間停止といったリスクも大幅に軽減されるでしょう。移行プロセスの安全性を重視したい企業には、データハブを強くお勧めします。
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まとめ
従来のシステム移行方式では業務中断やコスト増加、データ不整合といったリスクがあり、多くの企業が移行に踏み切れない状況です。こうした課題を解決する手段として注目されているのが、データハブを活用した段階的移行方式です。
データハブは、データの一元管理や柔軟な連携を可能にし、移行プロセス全体を効率化します。業務への影響を最小限に抑えながら、スムーズな移行を実現することができるのです。
特に、複雑なシステム環境を持つ大企業や、金融業界・医療業界のように長時間のシステム停止が許されない企業にとって、データハブは効果的な解決策となるでしょう。
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このコラムを書いたライター
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