クラウド型 ERP 導入で進む「 ERP 一本化施策」の悪影響と対策
ERP ブームから 20 年経った現在では、新たに「クラウド型 ERP 」の導入が進められています。近年の流行でもあるクラウド型 ERP の導入を成功させるためには、 ERP 導入の本質を理解しておくことが重要です。本記事では、 ERP 導入の本質を理解しないで ERP 一本化を進めたことによる代償と考えておくべき対策について紹介します。
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日本における「 ERP 」の変遷と近年導入が進む「クラウド型ERP 」
2000年問題に端を発し、大企業を中心に ERP を導入する企業が増加し、ブームと言える様相を呈しました。このERPブームから約20年経過した現在では、新たに「クラウド型 ERP 」の導入がブームとなりつつあります。
本章では、日本国内においてERPがどのような変遷を遂げてきたかを簡単に振り返ります。
1990 年代 〜 2000年前後: ERP ブーム
企業資源計画と訳される ERP ( Enterprise Resources Planning ) は企業のすべての情報を統合し、部門間でシームレスな連携を可能とすることで、経営状況を把握しやすくし、経営判断のスピードを高めることが出来るものです。 1990 年代にはグローバルスタンダードとして ERP の必要性が高まったことで、 ERP の導入によって企業競争力の向上を図る企業が増加しました。
2010 年前後:成熟した ERP の導入
1990 年代に大企業を中心に広がった ERP の導入は徐々に中小企業にも広がっていくこととなります。
2010 年前後には日本の商習慣にもマッチした国産 ERP が登場し、機能・金額の面でも成熟した ERP製品も登場してきました。そのため、大企業では従来の ERP から切り替え、中小企業でも ERP
を導入する企業が増加しました。
2010 年代後半:クラウド型 ERP の導入
2010 年代後半にはクラウド型 ERP が登場し、再び切り替えブームを巻き起こしました。
ブームの背景には、 IT 資産を出来るだけ持たずに費用化する経営上の判断をする企業が増加したことや、ERP 自体の開発や追加機能の開発ができる人材が不足してきていたことが考えられます。
2020 年前後: ERP 一本化施策
そして近年、クラウド型の業務システムも多く登場し、多くの企業では ERP の周辺には多数の外部システムやパッケージシステムを連携させている状態にあります。その結果、クラウド型 ERP 導入の流れを受け、自社の業務を ERP の標準機能に合わせたり、機能開発を ERP のアドオン開発に寄せたりする「 ERP 一本化施策」に舵を切る動きが加速しています。
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ERP 導入の本質とは
ERP 導入のメリットは企業によりさまざまですが、本質は「ベストプラクティスの導入」にあります。
日本より早くから ERP の普及が進んだ諸外国では、人材の流動性の高さから、中途で入社した人間でもすぐに馴染むことができる「標準的でベストプラクティスな業務やスキル」を実現が求められる傾向にあります。自社の業務フローに合わせたシステムを作るのではなく、 ERP の導入を通じて、業務を他導入企業と同じように標準化し、効率化する目的で導入されることが多く、ベストプラクティスをパッケージングした「 ERP 」が大きな支持を集めました。
一方の日本では新卒一括採用や終身雇用などの制度から、諸外国と比べ人材の流動性は低いといった違いや、「カイゼン」の文化から諸外国のような業務の標準化を目的とした ERP ではなく、既存のレガシーシステムで実現済みであった高度な自社業務へ適合する ERP 、またはスクラッチ開発に匹敵するカスタマイズやアドオン開発で対応していくことが求められました。
このように諸外国と日本では求められる ERP 導入の目的が異なります。 ERP 導入の本質的目的を理解しないまま、「 ERP 一本化施策」を進めてしまった場合、さまざまな悪影響が発生する可能性があります。
本質を理解せず ERP 一本化を進めたことによる代償
本章では、 ERP の本質を理解せず、 ERP 一本化施策を推進してしまうことで起きうる代償について紹介します。
日本企業では、自社の業務に適用する ERP を導入するために、多くのアドオン開発やカスタマイズが行われる傾向にあります。このような対応を取る場合、開発・バージョンアップ費用の高騰や、ベンダーによるロックインなどの負債が残ってしまう可能性があります。この結果、社内の情報システム部門の開発人材が育たず、開発人材の空白化を招くリスクが高まります。
また、パッケージへのアドオン追加を避け、周辺システム化戦略を練りたいと考えていても、 ERP 導入に多くの予算が割かれてしまったことで、十分な時間を確保できないといった理由から、将来の拡張を想定できておらず、後から開発が行われたり、アドオンが乱立してしまったというケースもあります。
この様な問題に見舞われないためにも、 CIO 、情報システム部門はどのような対策を考えればいいのでしょうか。次章では、考えておくべき対策について紹介します。
CIO 、情報システム部門が考えておくべき対策
アドオンの乱立は保守運用費用の高騰、ベンダーによるロックイン、開発人材の空白化などさまざまな負債となって企業にのしかかります。
このようなアドオン地獄に陥らないためにも、 CIO 、情報システム部門が考えておくべき対策として、「周辺システムまで含めた全体構想を実施する」や「後から開発がしやすい仕組みづくりを構築する」といったことが重要です。
前者は予算の問題などで、とん挫する可能性があることは前章でも紹介しました。後者の「後から機能拡張しやすい仕組みづくり」に適しているのが、近年注目される「 aPaaS 」です。
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このコラムを書いたライター
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