情報システム部門のあるべき姿とは?DX時代に求められる攻めのIT戦略について解説

IT技術が進展し、DXの必要性が高まっている現在、情報システム部門の重要性が増しています。システムの保守・運用といった従来型の役割に加え、ITの視点に立った経営戦略の立案という企業経営に影響を与えるような役割も求められるようになり、部門として大きな変革を迫られています。本記事では、DX時代に情報システム部門に求められる「攻めのIT戦略」について解説します。
- 目次

- お役立ち資料
- DX時代における
IT部門のあるべき姿とは
情報システム部門の変革が求められている理由
多くの業務領域においてITテクノロジーの活用が広まっている昨今、情報システム部門の変革が求められています。本章では、その背景にある情報システム部門を取り巻く環境の変化と、DX時代における情報システム部門の存在価値について解説します。
情報システム部門を取り巻く環境の変化
近年、IT技術の進展により多くのITサービスのクラウド化が進んだことで、オンプレミス型のように自社内にサーバーを設置してシステムを構築する必要性が減っています。また、パッケージソフトが普及したこともあり、情報システム部門の中心的な役割が新しいシステムの開発・構築から、既存システムの保守・運用へと変わってきました。
しかし、古くなったシステムの改修は労力がかかるだけでなく、使用されている技術も古いためメンテナンスに費やす時間の増加につながっており、そのために新たな技術へのキャッチアップが進まなくなっています。さらに、業務部門がIT部門の関与なく導入したシステムの全容を把握できなくなっていることも、新技術への対応を難しくしている要因となっています。
さらに、近年では生成AIなどの先進技術が急速に普及し、企業の業務プロセスや意思決定、顧客対応における活用が進んでいます。また、システム開発の現場においても、コード自動生成やテスト自動化、要件定義の支援などにAIを活用する動きが加速しており、開発体制そのものの変革が始まっています。
生成AIがシステム開発に与える変革や実際の開発事例については以下の記事で紹介しております。

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AIは業務の自動化や高度なデータ分析を可能にする一方で、セキュリティや倫理面での新たな課題も生み出しています。こうしたAI技術への対応は、もはや情報システム部門だけで完結するものではなく、業務部門との連携や全社的なガバナンスの確立も求められる重要テーマとなっています。
DX時代における情報システム部門の存在価値
製品やサービス、あるいは企業のビジネスモデルや組織そのものを大きく変革するDXの重要性が高まっており、情報システム部門にはDX推進を主導する役割が期待されています。DXがうまくいけば生産性向上やコストの削減、働き方改革などが進み、企業の競争力にも大きく影響するため、情報システム部門の存在価値はますます高まっているといえます。
また、DXへの取り組みが進んでいる企業ほどシステム構築の内製化が進んでいる傾向があり、SIerやベンダーに依存しない開発体制の整備が求められています。
ベンダーへの依存を回避するシステム開発の内製化については、以下の記事で詳しく解説しています。

- DX先進企業で進むシステム開発の内製化。その背景とメリット、企業が直面する障壁とは?
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今後情報システム部門に求められる役割を考える前に、従来の情報システム部門のあり方を一度見直してみる必要があります。次章では、従来の情報システム部門の役割について整理・紹介していきます。
情報システム部門の従来の役割
1960年代以降、企業の経営や業務の現場ではIT技術の活用が進み、企業にとって情報システム部門は不可欠なものとなりました。そこで求められていた従来型の役割としては以下のものが挙げられます。
システムの保守・運用
1つ目は、構築した社内システムが安定的に稼働するよう適切な保守・運用を行う役割です。社内からの要望を踏まえながら、システムの保守や修正、アップデート、カスタマイズなどを必要に応じて実施します。
社内インフラの構築
2つ目は、ウイルス感染やハッキングなどによるデータの消失、情報漏えいなどのインシデントを防ぐための、ネットワーク環境および社内インフラの整備・構築を通じたセキュリティ対策です。サイバー攻撃による被害を最小化し、速やかに復旧するためのセキュリティポリシーの策定も求められます。
社内からの問い合わせに対する窓口
3つ目は、ITシステムや機器の操作に関する問い合わせやトラブルへの対応など、ヘルプデスクとしての役割です。新たなツールや機器を導入する際のサポートのほか、社員のITリテラシーを高めるための社内研修を主導することもあります。
情報システム部門のあるべき姿とは
情報システム部門が従来の役割のみを担う「守り」の部門のままでは、企業の売上獲得につながらず、いわゆる「コストセンター」に位置付けられてしまいます。
このことは、コスト削減のために情報システム部門が行うべき業務をベンダーにアウトソーシングする流れが加速する結果を招きます。アウトソーシングが当たり前になると、システム運用が属人化し担当者の育成やノウハウが蓄積されず、ベンダーへの依存度がますます高まり、「ベンダーロックイン」に陥りやすくなるため注意が必要です。
ベンダーロックインの詳細については以下の記事をご覧ください。

- ベンダーロックインとは?リスクと脱却方法について解説
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こうした流れを変えるためには、情報システム部門が企業利益を生み出すことのできる組織になる必要があります。会社全体の事業戦略を踏まえたIT戦略を企画立案し、必要なシステムを開発、提供するためのプロジェクトを率先して推進することで、企業の成長やイノベーションを促す「攻め」の部門へと転換することが不可欠です。
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これからの情報システム部門に求められる役割
では、情報システム部門が「攻め」の部門に転換し、ITを駆使して企業利益を生み出すためには何が必要となるのでしょうか。「情報システム部門のあるべき」を実現するためには、以下3つの要素が求められます。
ITの視点からの経営戦略の立案
第一に、自社の中長期的な経営戦略を踏まえ、利益を最大化しイノベーションを促進するような提案をITの専門家の視点から行うことが重要です。IT視点からの経営戦略を立案することで、デジタルを通じたビジネスモデルや組織の変革という本来の意味でのDX実現につながります。
データの収集・分析・活用
ITを駆使した企業利益の最大化のためには、データの収集・分析・活用も不可欠です。社内に点在しているあらゆるデータを収集し多角的な分析を行うことで、各データ間の相関関係や因果関係、長期的な変化の傾向など、人による観測・観察だけでは得られない有益な示唆を得られる可能性が高まります。

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俊敏性(アジリティ)の確保
IT技術の進展に伴って、市場環境やビジネスニーズは目まぐるしく変化しています。そうした変化にスピーディーかつ臨機応変に対応するための俊敏性(アジリティ)の確保も「攻めのIT部門」にとっては重要です。

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あるべき姿を実現するために
「攻めのIT部門」というあるべき姿を実現するためには、IT部門全体のマインドセットの変革やスキルの向上が必要不可欠です。具体的には、従来のIT部門の役割にとらわれるのではなく、どうすれば事業成長に貢献できるのかを前向きに考え、実行するための心構えを持つことが大切です。
そのためには、個々人の意識改革に向けて部門内で活発にコミュニケーションを図り、目的意識や課題感を共有していく必要があります。
スキル面では、経営者的な高い視座から戦略を立案する能力や、その戦略を実現するために関係各所を巻き込み協力体制を構築していくためのコミュニケーション能力が重要です。さらに、ベンダー依存に陥らないよう個々人の開発スキルのアップも求められます。
さらに、近年は、AI技術を業務にどう取り入れるかを判断し、実際の業務に活用していくためのスキルが求められています。たとえば、システム開発においてもAIを活用する動きが進んでおり、業務の効率化や品質向上を目的とした導入が増えています。情報システム部門には、こうした新しい技術を理解し、必要に応じて導入や活用を進めていく役割も期待されています。
下記の資料では、情報システム部門の具体的な変革の方法についてより詳細に解説していますので、変革の全体的なイメージを把握したい方はぜひご覧ください。

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このコラムを書いたライター

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