ソフトウェアの「コンポーネント型開発」。最新技術を活用した革新的な仕組みとは?
IT技術が急速に発展し、ビジネス環境が目まぐるしく変化する昨今、ソフトウェア開発においてもビジネスの変化への素早い対応が求められています。その中で注目されているのが、独立した部品(コンポーネント)を組み合わせて開発する「コンポーネント型開発」という手法です。本記事では、コンポーネント型開発が注目される背景やメリットと、それを実現する技術について解説します。
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- DX時代における
IT部門のあるべき姿とは
なぜ、ソフトウェアにおける「コンポーネント型開発」が注目されているのか
コンポーネント(component)は一般的には「部品」「構成要素」などを意味しますが、IT分野においては「システムやソフトウェアを構成する機能・データの単位」のことを指します。特定の機能やタスクを実行する独立した部分であり、コンポーネント単体ではなく他のプログラムと連携して使用されることが一般的です。コンポーネントは、将来的に他のソフトウェア開発にも再利用できるように、汎用性や独立性のある設計・仕様を有しています。
なお、ソフトウェアのコンポーネント化は「部品化」とも呼ばれ、独立したコンポーネント(部品)を組み合わせてソフトウェアを開発することを「コンポーネント型開発」といいます。
ソフトウェアの部品化については以下の記事で詳しく解説しています
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コンポーネント型開発のメリットを活かしたレガシーシステムからの脱却
「コンポーネント型開発」が注目されている背景にあるのが、レガシーシステムの存在です。昨今、技術の老朽化とシステムの肥大化・複雑化によりブラックボックス化したレガシーシステムが、多くの企業において問題視されています。2025年には構築から21年以上経過した基幹系システムの割合が60%を超えるとされ、それに伴い企業の競争力低下が懸念されており、経産省は「2025年の崖」として警鐘を鳴らしています。
出典:経済産業省 平成30年9月7日 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)」
従来の企業の基幹系システムは、堅牢性・安定性が最重要視されてきました。しかし、結果としてビジネスニーズの変化や技術の進化に柔軟に対応できないことが課題となっています。そこで、従来のように単一のモジュールやコンポーネントで構築されるモノリシックな開発ではなく、複数のコンポーネントを目的に合わせて結合し、再構成も可能な開発が求められるようになりました。
コンポーネント型開発を採用し、堅牢性だけではなく汎用性や独立性のある設計・仕様を持つというメリットを活かすことで、ブラックボックス化したレガシーシステムからの脱却が可能となり、今後システムがレガシー化することを避けることができます。
コンポーネント型開発はソフトウェア部品を組み合わせて開発できるため、開発スピードが圧倒的に早い特徴があります。また、単にソフトウェアを部品化するだけでなく、一度作成した部品の入れ替えや転用をすることでシステムの最適化を保つことができ、リプレイスをする必要もありません。
これにより、大規模なシステムであっても安定性を損なわず、迅速かつ効率的な開発が可能になります。
コンポーネント化するとどのようなメリットがあるのか
コンポーネント化の主なメリットとしては、以下の4つが挙げられます。
生産性向上
再利用可能なコンポーネントが増えることで、他の開発プロジェクトで同じ機能や要件を何度も実装する必要がなくなります。独立性を担保したコンポーネントは、他のコンポーネントからの影響を受けない疎結合の状態で存在するため、同時開発が可能になり開発効率の向上に貢献します。
その結果、生産性向上・ビジネススピードの最大化を実現できます。
変更容易性の向上
独立性を担保したコンポーネントであれば、開発の際にコンポーネント単位での入れ替え・追加を適宜できるようになります。これにより、仕様の変更やシステムの拡張に柔軟に対応でき、ビジネスの変化への追従性も高まります。
保守や変更の容易性向上
変更が必要な場合や不具合が起きた場合に、どこを修正すれば良いか特定しやすくなることもメリットです。また、該当するコンポーネントのみを修正すれば良いため、保守が容易になります。
さらに、新しい機能や要件を追加する際に、新たなコンポーネントを開発して既存のコンポーネントと組み合わせることができるため、機能拡張の容易化にも寄与します。
テストの容易化
コンポーネントは独立してテストできるため、単体テストが容易になります。単体テストの段階で不具合が見つかった際に、問題のあるソースコードの箇所を把握しやすくなり、修正のためのコストも低減可能です。
コンポーネントを実現する2つの技術
ソフトウェアを部品化する構想自体はかねてより提唱されていましたが、マイクロサービスとマイクロフロントエンドという2つの技術の登場によって本格的なコンポーネント化の実現が可能となりました。
マイクロサービスとは
マイクロサービスは一つひとつの機能とデータを1つの塊で部品化し、それらを組み合わせてアプリケーションを構築するアーキテクチャのことであり、従来型のアーキテクチャである「モノリシック」と区別されます。
モノリシックで作られるシステムの多くは、度重なる修正や変更により肥大化・複雑化しやすく、内部構造がブラックボックス化し、結果的に改修が困難になり仕様変更に時間を要します。
一方で、マイクロサービスはシステムの変更や改修時のリスクが低く、柔軟性に優れ、保守容易性(メンテナンス性)が高い点が特徴です。また、スピーディーな対応が可能になるデプロイの際にシステム全体を止める必要がない、といったメリットもあります。
マイクロサービスについては以下の記事で詳しく解説しています。
- マイクロサービスとは?DX実現へ導入が進む理由とモノリシックアーキテクチャとの比較
- 近年、ソフトウェアのアーキテクチャとして「マイクロサービス」が注目されており、DX実現に向けて大手企業でも導入が進んでいます。マイクロサービスとは具体的にどのようなアーキテクチャであり、どういったメリットがあ…
マイクロフロントエンドとは
マイクロフロントエンドとは、マイクロサービスの考え方をフロントエンドに拡張した開発手法のことです。バックエンド開発のアーキテクチャとしては主流となっていますが、フロントエンドに適用する手法としても注目されつつあります。
マイクロサービスでのバックエンド開発と同様に、開発スピードや柔軟性の向上などのメリットがあります。
マイクロフロントエンドの詳細については以下の記事をご覧ください。
- マイクロフロントエンドがアプリケーション開発に与える影響とは
- ここ最近、マイクロサービスの考え方をフロントエンドに拡張した「マイクロフロントエンド」という概念が広まりつつあります。一方で、マイクロフロントエンドの特徴やメリットなどをあまり把握できていない方も多いかもしれ…
次章では、これらの技術を活用してコンポーネント型開発を導入するためのプラットフォームをご紹介します。
アプリケーション開発・運用基盤「コンポーネント型aPaaS」とは
コンポーネント型開発のメリットを活用した上でも、レガシーマイグレーションを進める際には課題があります。属人化、ブラックボックス化したシステム、新たに導入したパッケージ、SaaS等のシステムなどすべてを理解した上で全体最適なシステムを構築することが理想ですが、現実的には簡単ではありません。
全体最適なシステムを構築する上で役に立つのが、コンポーネント型開発を導入するためのアプリケーション開発基盤である「コンポーネント型aPaaS」です。
aPaaSとはアプリケーション開発・運用を行うためのプラットフォームの一種であり、業務アプリケーションの部分のみを利用者が開発・運用することで、PaaSと比較して開発やリリースに伴うインフラの構築や保守の複雑さを解消できる特徴があります。また、SaaSよりも柔軟性や自由度が高く、個社特有の業務に対応できることもメリットです。
ラキールでは、コンポーネント型aPaaS「LaKeel DX」を提供しています。
LaKeel DXは、マイクロフロントエンドとマイクロサービス技術を活用し、ソフトウェアの機能を部品化し管理できることに加え、蓄積されたソフトウェア部品を「ローコード」で組み合わせることで高速開発を実現する運用基盤と定義できます。
従来の開発手法は、数年ごとに大掛かりなリプレイスを繰り返し、莫大な時間・労力を使い、常に技術的負債をため込む構造であり、その結果「技術の老朽化」と「システムの肥大化・複雑化」によりブラックボックス化したレガシーシステムとなってしまっていました。そこから脱却するためには、リプレイスが不要なコンポーネント開発による技術的資産の蓄積が不可欠です。「コンポーネント型aPaaS」なら、必要な部品の追加や入れ替えでシステムの最適化を保ち、技術的資産を積み上げることで投資効果を最大化できます。
詳しくは下記のページをご覧ください。
コンポーネント型aPaaS「LaKeel DX」
レガシーマイグレーションを実現するには個別最適から検討し、どの領域(システム)から実施するのか検討するなど段階的に進めていくことがおすすめです。どの領域から実施すべきかは、企業や業種、システム化された状況によって異なりますが、どの企業でもまずはIT部門の役割の変革をすべきでしょう。DX推進に向けてIT部門のあるべき姿に関する共通認識を持つことが重要となります。
下記の資料では、これからのIT部門のあるべき姿とその実現方法についてご紹介していますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。
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IT部門のあるべき姿とは
このコラムを書いたライター
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