ITの常識を変える”ソフトウェアの部品化”。期待できる効果とは?
ソフトウェアを独立した小さなコンポーネント(構成要素)単位に分割する”ソフトウェアの部品化”。従来からその発想自体はあったものの、近年のネットワークの発展やマイクロサービスアーキテクチャの実用化などにより、本格的な実現が可能となってきたといえます。ソフトウェアの部品化は、機能ごとに部品化したソフトウェアを組み合わせることで開発の柔軟性が向上し、メンテナンス・保守・機能拡張が容易になるなど、さまざまな利点があります。本記事では、ソフトウェアの部品化によるメリットやソフトウェア部品の再利用によって企業が実現できることについてご紹介します。
- 目次
- お役立ち資料
- DX時代における
IT部門のあるべき姿とは
ソフトウェアの部品化とは
日本企業のITシステムにおいては、技術の老朽化とシステムの肥大化・複雑化によりブラックボックス化したレガシーシステムの存在が大きな課題となっています。昨今、社会全体としてDXが求められていますが、レガシー化の拡大はシステムの修正・変更追加における柔軟性の低下や保守・運用費の増加をもたらし、DXの足かせとなります。こうした課題に対して、近年のネットワークの発展やマイクロサービスアーキテクチャの実用化などにより、有効な手段のひとつとして注目されているのが「ソフトウェアの部品化」です。
ソフトウェアの部品化とは、大規模なソフトウェアを独立した小さなコンポーネント(機能の塊)単位に分割することです。生産性向上・変更容易性の向上・ビジネスの変化への追従性・対応力の向上(レジリエンス=弾力性の確保)といった目的で行われます。通常、1つのソフトウェアの中には複数の機能がありますが、その機能ごとに部品を用意・開発し、組み合わせてシステムを開発する「コンポーネント型開発」が重要視されるようになってきました。
コンポーネント型開発については、以下の記事でも紹介しています。
- ソフトウェアの「コンポーネント型開発」。最新技術を活用した革新的な仕組みとは?
- IT技術が急速に発展し、ビジネス環境が目まぐるしく変化する昨今、ソフトウェア開発においてもビジネスの変化への素早い対応が求められています。その中で注目されているのが、独立した部品(コンポーネント)を組み合わせ…
ソフトウェアの部品化によるメリット
ソフトウェアの部品化には大きく以下3つのメリットがあります。
柔軟性の向上
コンポーネント型開発により部品の拡張や部品単位での入れ替え・追加が可能となります。これにより、仕様変更やシステム拡張に柔軟に対応できるメリットがあります。
メンテナンス・保守・機能拡張の容易化
ソフトウェアが小さなコンポーネントごとに分割されているため、不具合が起きた場合にどこを修正すれば良いか特定しやすくなります。該当するモジュールのみを修正すれば良いため、メンテナンス・保守の作業が容易になります。
また機能拡張時も、各部品が独立していることで、他の機能への影響を気にすることなく部品単位で追加すれば良いため、容易に対応できます。
再利用性の向上
機能ごとに独立した小さな部品として扱うことができるため、同じような機能が必要な他のシステムへの再利用が可能です。実績があり、品質の保証された既存部品を他のシステムに転用することで、システム開発の効率が高まります。
また、次章でご紹介するように、ソフトウェア部品を再利用することにより、企業のIT部門やビジネスにさまざまなメリットをもたらすことができます。
ソフトウェア部品の再利用が企業にもたらすメリット
コンポーネント型開発によりソフトウェアの各部品の再利用が可能となることで、以下のことを実現できるようになります。
技術的資産の蓄積
従来の開発手法では、技術革新による既存の技術の陳腐化や、予算・スケジュール上の制約による妥協の結果、時間が経つほど技術的負債が積み上がっていくという課題がありました。
たとえば、納期が短いためにその場しのぎの開発を行わざるを得ないことや、不十分な設計やアーキテクチャなど課題の解決を先延ばしにすることで、将来的に対処する範囲が拡大するといったケースがよくあります。
コンポーネント型開発では、各部品を個別に最新化していくことで技術的負債の発生を抑え、さらに他のシステム構築にも再利用できるため、「技術的資産」を蓄積していくことができます。
技術的負債については以下の記事で詳しく解説しています。
- 「技術的負債」の危険性と解消方法|技術的資産を積み上げる「サステナブルソフトウェア」とは
- システム開発の現場では、多くの企業が「技術的負債」という問題に直面します。技術的負債を放置すると、余計なコストや時間がかかってしまうため解消する必要がありますが、そこで重要になるのが「ITのサステナブル化」と…
ビジネススピードの最大化
ソフトウェア部品が蓄積され、再利用性が向上するに従い、システム構築における短期での導入が可能となります。異なる部品を複数の開発者が同時に開発でき、開発プロセス全体の効率が向上する点もメリットです。これらにより、ビジネススピードの最大化に貢献します。
内製化の推進
システム開発の内製化においては、技術者の不足やアプリケーション開発の難易度の高さなどさまざまな課題がありますが、ソフトウェアの部品化は内製開発を推進する要素の1つとなります。
ソフトウェア部品を組み合わせ、再利用することで、システム開発にかかる工数を大幅に削減できます。また、修正の影響範囲が限定されるため、影響範囲調査やテスト工数など、システムの保守・運用にかかる工数も大幅に削減可能となります。したがって、技術者の不足や開発難易度の高さといったハードルをクリアし、内製化を推進できるようになります。
加えて、開発のスケールがシステム全体から部品レベルに局所化され開発量が大幅に削減されることも、内製化を推進できる理由の1つといえます。
内製化を通じてベンダーロックインを脱却し、開発スピードや柔軟性の向上、ブラックボックス化の防止などさまざまなメリットが得られます。
内製化の実現に向けた課題や、ソフトウェアの部品化と同様に内製化を進める要素であるローコード開発については、以下の記事で詳しく解説しています。
- システム開発の内製化、実現に向けた課題とは? 失敗しないためのカギは「ローコード開発」と「ソフトウェアの部品化と再利用」
- 近年、システム開発を自社で行う「内製化」の動きが活発になっており、多くの企業にとって不可欠なDXの実現に資するものとして注目されています。しかし、技術者の不足やアプリケーション開発の難易度の高さなど、内製化に…
ソフトウェア部品化によるデメリット
一方で、ソフトウェアの部品化には以下のようなデメリットもあります。
① パフォーマンスの担保が難しい
ソフトウェア部品化において、異なる部品がAPIを介して連携し、複数の部品が一つの業務プロセスを構築する場合、パフォーマンスの課題が発生することがあります。その際、どの部品がパフォーマンスのボトルネックとなるかを特定するのは困難であり、問題を把握しにくいリスクがあります。
② 部品の粒度に正解がない
コンポーネントの粒度を揃えなければならないものの、適切な粒度を判断することは困難です。細かすぎる場合は過剰な管理が発生し、粗すぎる場合は再利用性や拡張性のメリットを損ねるリスクがあります。
③ クラウド環境の適切な設計が必要
ソフトウェア部品がクラウド環境で運用される場合、スケーラビリティと可用性の確保が重要です。コンテナ化された部品が運用時にクラウド環境でスケールアップ/ダウンされることを意識した設計をする必要があります。
④ 部品を横断したデータの参照が困難
ソフトウェア部品化においては、部品ごとに異なるデータを持つことになるため、部品横断でデータを参照・共有することが難しくなります。
次章では、これらのデメリットを解消してソフトウェア部品化/再利用のメリットを効果的に享受するための方法を紹介します。
ソフトウェア部品化の効果的な実装方法
アプリケーション開発・運用基盤『LaKeel DX』の活用
弊社ラキールが提供するLaKeel DXはマイクロフロントエンド・マイクロサービス技術で開発された、ソフトウェア部品を組み合わせてシステムを構築するプラットフォームです。ソフトウェアの部品化とその組み合わせによってシステムを構築することで開発期間を短縮でき、さらに技術的負債の蓄積を最小化して技術的資産を積み上げることが可能です。
また、LaKeel DXでは、前章でご紹介したようなソフトウェアの部品化特有のデメリットも解消します。
アプリケーションを運用・監視していくための監視ツール「LaKeel Sonar」の機能が備わっているため、ログ管理やメトリクス管理、パフォーマンス監視、アラート管理など、自動で運用監視が可能であり、パフォーマンスの担保における課題を解消します。
加えて、コンサルティングサービスによる導入支援やLaKeel DX独自の開発ルールの設定などにより、部品の粒度やクラウド環境の最適な設定、データの参照における解決策の提案・支援も可能です。
以降では、LaKeel DXを活用したソフトウェア部品化/再利用の事例をご紹介します。
ソフトウェア部品化/再利用の事例
大手日系企業10社が共同出資して設立されたある企業では、ブロックチェーン技術を活用した貿易プラットフォームの開発・提供を行っています。
貿易業務は荷主や銀行、保険会社、税関など多くの関係者が複雑に絡んでおり、取引の際に発生する手続きが多岐にわたりますが、実務の多くは”書類”や”PDF”による非効率的なコミュニケーションが主流となっていました。また、膨大な貿易データを処理するうえでの人手不足や、コロナ禍で出社制限がある中で書類の処理が遅延する課題もあり、輸出入停滞のリスクが顕在化していました。
こうした課題は貿易業務の完全電子化により改善できることから、完全電子化を目指すため貿易プラットフォームの構築による「貿易DX」が求められました。このプラットフォームでは信頼性を担保するためにブロックチェーン基盤が採用されており、ブロックチェーン基盤とアプリケーション層を柔軟に連携させることが必須です。
そこでアプリケーション層の柔軟性を担保するため、アジャイル開発に向いている「コンポーネント型開発」を実現するLaKeel DXを導入。ソフトウェア機能の部品化/再利用を活用し開発した貿易プラットフォームを通じて、貿易実務全体の業務効率化とコスト削減を図りました。
今後は機能部品を再活用することで、さらなる新規事業への展開・転用のコスト削減を目指しています。
ご紹介した事例のように、LaKeel DXでは既存の部品の組み合わせや再利用により新しいアプリケーションやサービスを迅速かつ低コストに開発できるだけでなく、生み出したソフトウェア部品を市場に流通させることで、部品提供企業が利用料を得られるメリットもあります。これにより、ソフトウェア部品の流通・販売を軸とした新たなデジタルビジネスの可能性が広がります。
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以下の資料では、DX時代において企業のIT部門が果たすべき役割について解説しています。IT部門の改革に必要なITツールの活用方法や内製化の推進についても紹介しておりますので、ぜひご参考にしてください。
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