マイクロサービスとは?DX実現へ導入が進む理由とモノリシックアーキテクチャとの比較
近年、ソフトウェアのアーキテクチャとして「マイクロサービス」が注目されており、DX実現に向けて大手企業でも導入が進んでいます。マイクロサービスとは具体的にどのようなアーキテクチャであり、どういったメリットがあるのでしょうか。本記事では従来型のアーキテクチャである「モノリシック」と比較しながら解説していきます。
- 目次
マイクロサービスとは
今注目されているアーキテクチャである「マイクロサービス」について紹介します。
マイクロサービス(マイクロサービスアーキテクチャ)とは
マイクロサービスは、ソフトウェアアーキテクチャの1つで、一つひとつの機能(サービス)とデータを部品化し、それらを組み合わせてアプリケーションを構築する手法です。部品化されたマイクロサービスは、実行基盤が異なるOSやハードウェア上で動作していたとしても、Web APIを介して連携することで相互に利用できます。
なお、マイクロサービスの考え方をフロントエンドに拡張したアーキテクチャを「マイクロフロントエンド」と呼びます。
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マイクロサービスの特徴
マイクロサービスは以下のような特徴を有しています。
・Web APIによる連携
相互のサービスはAPIを通じて連携します。これにより、独立したサービス同士を1つのシステムとして運用することができます。
・独立性
各サービスは独立しており、他のサービスと疎結合で動作します。このため、システム全体への影響を最小限に抑えつつ、個別に更新やスケールが可能です。
・言語や技術の多様性
それぞれのサービスで異なるプログラミング言語や技術スタックを選択することが可能です。
コンテナとマイクロサービスの関係性
コンテナとマイクロサービスは、現代のソフトウェア開発において密接に結びついている技術です。
コンテナとは、OS上にアプリケーションごとの専用の環境を作成する仮想化技術です。マイクロサービスでは、各サービスが個別のコンテナ内で実行され、サービス間のやり取りはWeb APIを通じて行われます。
これにより、異なるサービスがそれぞれ独自の開発基盤を使用していても、同じホスト上で安定して動作させることができます。
SOA(サービス指向アーキテクチャ)との違い
SOA(サービス指向アーキテクチャ)も、システムやアプリケーションを「サービス」として分割し、それらを連携させて機能を提供するアーキテクチャで、マイクロサービスと似ていますが、以下の様な相違点があります。
SOAのサービスは比較的大きく、サービス間で同じデータストレージを共有しているのに対し、マイクロサービスはSOAよりも細かい単位のサービスで構成され、各サービスが独立したストレージを持っています。
これに対して、マイクロサービスはSOAよりも個々のサービスの独立性が高く、サービス同士が疎結合であるため変更や修正が局所的に行いやすい構造といえます。
DX実現においてマイクロサービスが注目される背景
マイクロサービスはDX(デジタル・トランスフォーメーション)を支えるアーキテクチャとして注目されています。
DXとは、デジタル技術やITを活用し、ビジネスモデルや社会生活などの抜本的な変革を行うことを指します。特に、ビジネス環境の変化にいち早く対応するには、システムを環境変化に合わせて仕様変更や機能拡張に柔軟に対応できる状態を維持しながら、いかに迅速に構築できるかが重要になります。
しかし、モノリシックと呼ばれる従来型のアーキテクチャで作られるシステムの多くは、度重なる修正や変更により肥大化・複雑化していきます。そのようなシステムは、内部構造がブラックボックス化し、その結果、改修が困難になり仕様変更に時間を要するなど、ビジネス変化への柔軟な対応力に欠けているのが実情です。
そこで、各機能(サービス)と関連するデータを、マイクロサービスという独立した小さなサービス(アプリケーション)として開発し、複数のマイクロサービスを組み合わせて大規模なシステムを構築する方法が注目されています。マイクロサービスで作られたシステムには以下の特徴があります。
・システムの変更や改修時のリスクが低く、柔軟性に優れた保守容易性(メンテナンス性)が高い
・システム変更時の影響が局所的になりスピーディーな対応が可能になる
・システムリソースやサーバー構成が利用状況に応じて動的に変更可能であり、システムの必要な部分だけを対象とした拡張ができる
・個々のサービスが独立しているため、本番環境での運用開始(デプロイ)の際にシステム全体を止める必要がない
このような理由からマイクロサービスに注目が集まっています。
従来型のアーキテクチャ「モノリシック」とは
モノリシックとは、従来型のアーキテクチャであり、複数の機能を一枚岩(モノリス)のように1つのアプリケーションを構築する方法です。アプリケーションは同じOS上で分割できない1つのモジュールで構成されており、複数の機能はモノリス内で相互に連携しながら実行されます。
では、この2つのアーキテクチャは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。次章では3つの観点から比較します。
3つの視座から見たマイクロサービスのメリット
ここではモノリシックと比較したときのマイクロサービスのメリットについて、実際にシステムやアプリケーションを運用していく中で重要となる3つの視点から紹介します。
① システムメンテナンスの難易度
1つ目は、それぞれのアーキテクチャで構成されたシステムのメンテナンスの難易度に関する視点です。
モノリシックは、モジュール構造が一枚岩で固定化されたシステムであるため、一部の機能(サービス)を変更するとその影響が全体に波及し、影響範囲の調査・特定という作業が必要となり複雑化します。したがって改修の難易度が高く、アプリケーションの機能(サービス)を追加・変更する際の俊敏性が低い点が課題です。また、長年使われているシステムであれば、有識者も不在であることが多く、そのリスクはより一層高まります。
一方、マイクロサービスであれば、独立した機能(サービス)部品がWeb APIによって組み合わされているため、影響範囲は限定的であり、影響範囲の調査・特定という作業工数は低減できます。また、完全にシステムを停止することなく、必要な機能(サービス)のみを改善できるため機能(サービス)の追加・変更もスムーズに行うことができます。
以上から、マイクロサービスは、変更や改修時のリスクが低く、保守容易性(メンテナンス性)が高いアーキテクチャといえます。
② ビジネスニーズへの対応速度
2つ目は、ビジネスニーズへの対応速度に関する視点です。
モノリシックは1つの大きな塊のソフトウェアで機能(サービス)同士が密結合しているため、システムやアプリケーションが大きくなればなるほど、機能(サービス)の変更や新機能の追加などの対応に時間と労力がかかります。それに伴い、急速に変化するビジネスニーズへの迅速な対応が難しくなります。
一方でマイクロサービスは、ビジネスサイドから求められる要件に応じて、機能単位(サービス単位)で個別に変更することができるため、ビジネスニーズの変化への臨機応変な対応が可能です。
また、マイクロサービスを組み合わせて作られた業務アプリケーションは、ビジネス環境の変化に合わせて必要な機能(サービス)だけを取り出して、“新たな機能(サービス)として再利用する“といったことも可能になります。
これらからマイクロサービスは俊敏性に優れ、拡張容易性が高い柔軟なアーキテクチャであるといえます。
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③ 「技術的負債」と「技術的資産」の蓄積
3つ目は、開発したシステムや各機能を「技術的負債」として残すか、「技術的資産」として蓄積するかという視点です。
モノリシックで開発された従来のシステムは、前述の通り、改修の難易度が高くなる傾向にあります。したがって、開発されたシステムはビジネス環境の変化やデジタル技術の発達に対応しづらく、日を追うごとに陳腐化していきます。また、時間をかけて機能追加などカスタマイズをされたシステムは複雑化・ブラックボックス化しやすく、数年に一度発生するシステム刷新の際には膨大な時間や多額の費用を要すことから、「技術的負債」として企業に残り続けます。
技術的負債については以下の記事で詳しく解説しております。
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一方でマイクロサービスは、各機能(サービス)が独立しているため、必要な機能(サービス)のみを取り出して組み替えることができ、少ないリスクでシステムの改修を行うことができるため、システムを常に最新の状態に保つことが可能になります。
このようなメリットから、今後のアプリケーション開発においては、マイクロサービスの活用が期待されています。
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マイクロサービスの実装を阻む3つの課題
マイクロサービスはシステム開発に多くのメリットをもたらしますが、導入や運用には以下のような課題もあります。
課題① インフラレベルの複雑さ
マイクロサービスはクラウドベースで運用されることが多く、多数の部品を組み合わせてシステムを構築します。これにより、全体の管理が一層複雑になります。特に、障害が発生した場合には、迅速に発生箇所と原因を特定し、適切に対処する能力が求められます。このためには、クラウド技術やマイクロサービスに関する高度な知識とスキルが必要です。
課題② 設計における粒度の調整
マイクロサービスを効果的に設計するためには、「粒度」の調整が極めて重要です。粒度が細かすぎると、多くのサービスが必要となり、データの整合性やトランザクションの一貫性が確保しづらくなります。さらに、サービス間のAPI通信が増えることで、システムのパフォーマンスが低下するリスクもあります。一方で、粒度が粗すぎると、マイクロサービスの利点を十分に活かせません。
そのため、適切な粒度で設計する必要があります。
課題③ 実装レベルでの整合性の維持
マイクロサービスでは、複数のアプリケーションが非同期に並行して動作し、トランザクションを処理します。これにより、データの整合性に関する問題が生じることがあります。特に「結果整合性」を考慮し、処理中のデータに不一致があっても最終的な結果が正しければ問題としない設計が必要です。ただし、障害発生などによってシステムが中断・停止すると巨額の損失や信用の失墜などの致命的な問題を招くミッションクリティカルなトランザクションにおいては、一貫した整合性が求められるため、設計段階で整合性の許容範囲を慎重に検討する必要があります。
マイクロサービスのメリットを最大限に引き出すためには、これらの課題を理解し、適切に対処することが必要です。
次章では、3つの課題を解決することができるマイクロサービス型のアプリケーション開発基盤、『LaKeel DX』をご紹介します。
マイクロサービス型アプリケーション開発基盤「LaKeel DX」
LaKeel DXは、マイクロサービス型のアプリケーション開発運用基盤です。
LaKeel DXはオープンな技術を採用しており、マルチクラウド環境に対応しています。これにより、異なるクラウド環境間での技術移転もスムーズです。
また、LaKeel DXはローコードや AIを活用した開発が可能であり、高度なIT知識がないユーザーでも直感的で簡単な画面操作ができます。これにより、直接業務に関わるユーザーが、自ら業務アプリケーションの開発を行うことができるようになります。
さらに、LaKeel DXは「インフラ」「設計」「実装」レベルにわたって、マイクロサービスの価値を最大限に高める機能やサービスを用意しております。
▼LaKeel DXの製品ポートフォリオ
以下では、マイクロサービスの課題を解決するLaKeel DXの機能を紹介します。
「インフラレベルの複雑さ」に対する解決策
インフラにおける課題は、「LaKeel Manager」と「LaKeel Sonar」が対応します。
LaKeel Manager:システム全体を一元管理し、コンテナのセットアップからCI/CD、デプロイまでの効率化を図ります。これにより、障害発生時にも迅速な対応が可能です。また、インフラコストの管理も容易で、コスト削減を実現できます。
LaKeel Sonar:マイクロサービスの運用を監視し、障害や閾値を超えた事象を自動で検知し、アラートを通知します。これにより、障害の迅速な検知と対応が可能になります。
「設計における粒度の調整」に対する解決策
設計における課題は、「LaKeel Synergy Logic」と「LaKeel SDK」が対応します。
LaKeel Synergy Logic:ビジネスロジックをGUI画面で簡単に作成でき、サービスの粒度調整を柔軟に行えます。既存の部品を組み合わせてロジックを作成し、新しいワークフローや機能追加も容易に対応できます。
LaKeel SDK:共通機能で使用するデータをサービス側にキャッシュし、API通信を削減します。これにより、パフォーマンスの低下や整合性の問題を軽減できます。
「実装レベルでのデータ整合性の維持」に対する解決策
実装における課題は、「LaKeel Data Storage」が対応します。
LaKeel Data Storage:複数のシステムで共有するデータを配信管理し、API通信を減少させることでデータの整合性を確保します。これにより、データの整合性を保ちながら、マイクロサービスの設計・実装における整合性維持が簡便に行えるようになります。
- LaKeelシリーズ サービス資料請求
- ラキールがご提供する「LaKeelシリーズ」について、資料請求をご希望の方はこちらから受付しております。 お気軽にお申し付けくださいませ。
さらに、データ統合分析基盤であるLaKeel Data Insightとの連携をすれば、アプリケーションの運用の中で蓄積されたデータを容易に分析・活用することができます。データ活用により既存ビジネスの改革や拡張を実現でき、ビジネスニーズの変化に更に俊敏性を持って対応することが可能になります。
LaKeel DX・LaKeel Data Insightの詳細については、以下よりお問い合わせください。
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