モダナイゼーションとは?目的と重要性、マイグレーションとの違い、具体的な手法と成功のポイントを解説
IT環境が刻々と変化する昨今、老朽化したシステムを現代的なシステムへと変革する「モダナイゼーション」が注目されています。これまで蓄積した情報資産を活用しつつ、レガシーシステムの問題点を解消するモダナイゼーションは企業の競争力強化にとって重要な手法ですが、成功に導くためには押さえるべきポイントが存在します。本記事では、モダナイゼーションの概要やその手順、また成功させるためのポイントについて解説します。
- 目次
- お役立ち資料
- ローコードによるモダナイゼー
ションだけでは終わらせない
モダナイゼーションとは
モダナイゼーションとは、レガシーシステムと化した企業の古い基幹システムなどのソフトウェアやハードウェアを、時代の要請に合わせて近代化(Modernize)することです。
モダナイゼーションの目的と重要性
日本企業では、メインフレームで稼働している基幹システムを数十年もの間使い続けていることが珍しくありません。ビジネスが刻一刻と変化する中で、システムが旧態依然のままでは使い勝手が悪くなっていき、機能追加やカスタマイズを重ねるたびにコストや手間がかかります。また、エンジニアの世代交代で古いシステムの内情を把握している担当者がおらず、システムがブラックボックス化しているケースも見られます。
モダナイゼーションの目的は、老朽化したレガシーシステム内にある業務データ等の情報資産を活用しつつレガシーシステムの問題点を解消し、ビジネスのスピードと柔軟性の向上を実現するシステムへと変革していくことにあります。
モダナイゼーションが注目された背景には、DXに対する日本企業の対応の遅れが指摘されたことがあります。経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、日本企業がDXを進められず非効率化したレガシーシステムを使い続けた場合、2025年には日本全体で年間12兆円もの損失が生じる「2025年の崖」という問題が提起されました。モダナイゼーションは、この「2025年の崖」を回避するうえで非常に重要なプロセスといえます。
レガシーシステム脱却に向けた課題や脱却方法などについては、以下の記事で解説しています。
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モダナイゼーションとマイグレーションの違い
モダナイゼーションと似た概念としてマイグレーション(migration)というものがあります。
モダナイゼーションが「近代化」を意味するのに対し、マイグレーションは「移行」を意味する言葉です。モダナイゼーションは現行のシステムに蓄積された情報資産を活用しつつシステム構造を変革することを指しますが、マイグレーションは既存のシステム構造や要件を変えずに、データやシステムを新たな環境へ移行することを指します。オンプレミスからクラウドへの移行がその典型例です。
レガシーマイグレーションの詳細については以下の記事で解説しています。
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また、以下の記事ではレガシーシステムを刷新するための方法の1つであるローコード開発について解説しています。
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モダナイゼーションの手順
モダナイゼーションを実行する際には以下のステップを踏む必要があります。
①モダナイゼーションを行う対象を明確にする
まずは現行システムの運用状況、ユーザー部門の利用実態を把握・可視化し、「変えられる部分」と「変えられない部分」に分けます。変えるべき対象が少なければ業務システムの一部を刷新する手法をとることが有効であり、多ければ抜本的な改革が必要となるため、その分のコストや時間がかかることを想定しなければなりません。
また、刷新後に当該部分の業務プロセスや手順自体も変える必要があるのか、あるいはそのままで良いのかについても、現場と相談しながら検討する必要があります。
②置き換えるシステムの検討と目的の明確化を行う
次に、置き換えるシステムについて検討します。どのシステムを置き換えるかの判断基準については、例えば、費用対効果の高い領域や、変化の大きいビジネス領域に影響するシステムを優先するといったことが考えられます。早期に置き換えなければ将来的に大きな問題が生じる可能性がある領域かどうかを判断し、優先的に取り組むことも重要です。
また同時に、モダナイゼーションの目的を明確化することも必要です。モダナイゼーションの主要な目的は、業務プロセスの最適化、効率化、柔軟性の向上、セキュリティの強化などが挙げられます。これらの目的から具体的かつ定量的に目標を設定し、成功の評価基準を明確にします。
③必要な予算や人員などを算出して具体的な計画を立てる
モダナイゼーションの対象やシステムの比較検討を行った後には、予算や人員を算出し、モダナイゼーションに向けた具体的な計画を立てるなど実務面の検討を行います。
計画を立てる際には、検討初期から現場メンバーに参画してもらうことで、現場の要望を踏まえ必要な機能や仕様について早い段階で詰めることができ、効率的な構築が可能になります。
④目標に対する効果測定を実施する
最後に、②で立てた目的・目標に対する効果測定を実施します。これにより、投資の合理性を評価します。また、達成すべき目標に対する進捗状況を定期的に評価することで、プロジェクトの途中で問題が発生した場合にも、早期に改善策を検討、実行することができます。
モダナイゼーションの成果を明確に把握し、将来の意思決定に役立てることで、企業が持続的な競争力を身に付けることにもつながります。
モダナイゼーションを成功させるポイント
モダナイゼーションを成功させるためには、以下3つのポイントを押さえることが重要です。
IT人材不足でもシステム開発ができる環境構築
総務省の調査によると、多くの企業はIT人材やデジタル技術に関する知識不足に直面しており、IT人材が不足している状態でもシステム開発できる環境を構築する必要があります。
そのためには、たとえばITリテラシーが高くない従業員やエンドユーザーなど非エンジニアでもシステム開発が可能なノーコード・ローコード開発ツールの導入などが効果的です。
出典:総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」
また、自社内でIT人材を育成する観点から、システム開発の内製化を推進することも選択肢になります。内製化のメリットや課題については以下の記事で詳しく解説しています。
- DX先進企業で進むシステム開発の内製化。その背景とメリット、企業が直面する障壁とは?
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システムの柔軟性確保とビジネスへの対応スピードの向上
モダナイゼーションの目的はシステムを時代に適したものに変革することです。日々変化するビジネスニーズに対応するため、システムの柔軟性確保とスピード(俊敏性)向上を実現できる手法を取り入れる必要があります。
たとえば、それぞれの機能を独立した小さな部品に分け、それらを組み合わせてシステムを構築するマイクロサービスと、ローコード開発を掛け合わせることで柔軟性とビジネススピード向上を図ることが可能です。
IT ベンダーへの丸投げからの脱却
システム開発をベンダーに丸投げ状態にしていると、そのベンダーに固有の仕様や標準が採用され、ベンダーのシステムに依存する「ベンダーロックイン」になりやすい問題があります。ベンダーロックインに陥ると、技術やコスト、時間などのさまざまな制約がかかり、モダナイゼーションに向けて自社で柔軟にシステム開発することが難しくなるため、ベンダーへの依存から脱却することが重要です。
ベンダーロックインについては以下の記事で詳しく解説しています。
- ベンダーロックインとは?リスクと脱却方法について解説
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次章では、これらのポイントを押さえた上で、企業のモダナイゼーションの実現を可能にするソリューションをご紹介します。
モダナイゼーションを実現する新たな選択肢 LaKeel DX
ラキールでは、マイクロサービスとローコード開発を組み合わせたアプリケーション開発基盤「LaKeel DX」
を提供しており、企業のモダナイゼーションに向けた支援を行っています。
以下では、LaKeel DXの特徴とLaKeel DXを活用してモダナイゼーションを実現した事例をご紹介します。
LaKeel DXの特徴
LaKeel DXはローコード開発基盤を採用しており、誰でも簡単・便利に開発が可能です。また、マイクロサービスにより技術的資産を積み上げる仕組みであり、ソフトウェアの部品化による開発スピードの向上を実現します。
さらに、ユーザーの自律・自走に向け導入~運用まで一貫したコンサルティングとサポートを受けることができ、自社に合わせた伴走型の支援をしています。これによりベンダー依存からの脱却を進めることが可能です。
モダナイゼーションを成功させた事例
ある大手製造メーカーA社では、レガシー化したメインフレーム温存型のアプリが約300もの規模で現役運用されており、システムの設計図も存在せず、まさにブラックボックスとなっていました。加えて、社内でその仕組みを理解できるエンジニアがいなかったため、モダナイゼーションの検討が開始されました。
モダナイゼーションの過程で、ホスト、C/S、SaaSなど、異なるシステムを分類し、システムごとにプラットフォームを導入すべきだとの判断がなされましたが、それぞれのプラットフォームには多岐にわたる機能が求められ、これらを実装するための社内のスキル教育の難しさが課題として浮上します。ベンダーに依頼すると、再びブラックボックスの状態に戻る可能性があることから、A社はモダナイゼーションの方法を模索していました。
ここで、A社が選択したのが「LaKeel DX」です。「LaKeel DX」には、業務アプリケーションの開発に必要な要素が備わっており、運用・監視機能もaPaaSとして提供されています。これにより、システムごとに個別に運用・監視を行う必要がなくなりました。また、A社はベンダーに完全に依存せず、自社内で主導権を握ることで、ベンダーからの支援も受けながら、ブラックボックス化に陥ることなくモダナイゼーションを推進。さらに、「コンポーネント型開発」というソフトウェアを部品化する手法を選択することで、リプレースが不要になり、少ない開発工数でシステムを構築することができるようになったため、エンジニアの人材不足やスキル不足の問題も解決できました。
以下の資料では、LaKeel DXを活用してモダナイゼーションを実現する方法について詳しく解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
- お役立ち資料
- ローコードによるモダナイゼー
ションだけでは終わらせない
このコラムを書いたライター
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