レガシーシステムの問題点!脱却方法を事例とともに解説
デジタル技術がますます進歩する昨今、旧態依然としたシステムを利用し続けることによる損失は無視できないほど大きくなりつつあります。こうしたレガシーシステムからの脱却は多くの企業にとって喫緊の課題です。本記事では、レガシーシステムの問題点や脱却方法について、事例をもとにご紹介します。
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レガシーシステム脱却とは
以下ではまず、レガシーシステムの概要と脱却が求められる背景について説明します。
レガシーシステムとは
レガシーシステムとは、古い技術やアーキテクチャ、プロセスなどを使用して構築されたシステムのことを指します。代表例としては、1960年代~1980年代にかけて普及したメインフレームやオフコン(オフィスコンピュータ)などがあります。
これらのシステムは、長期間にわたって使用されてきたため、技術的に古く、時代遅れになっていることが一般的です。また、度重なるプログラムの更新や修正、カスタマイズにより、担当者も全容を把握できないほど複雑化・ブラックボックス化が進んでいます。
このような老朽化したシステムは、「技術的負債」とも呼ばれます。
「2025年の崖」との関係性
レガシーシステムの存在は、2018年に経済産業省で発表された「2025年の崖」とも大きく関係します。「2025年の崖」とは、既存のレガシーシステムを企業が利用し続けることで、IT技術の進歩やビジネス環境の変化についていけず、国際競争力が低下することを危惧した言葉です。
レガシーシステムの維持管理に多くの予算が費やされることで新たな技術への投資が進まず、保守運用の人材不足も深刻化することで、2025年以降、最大で12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘されています。
このような背景から、レガシーシステムからの脱却は、多くの企業にとって重要な課題となっています。
レガシーシステムの問題点
レガシーシステムを使い続けると、以下のような問題を引き起こします。
技術的な制約
一般的にレガシーシステムは、古い技術やアーキテクチャを使用しています。そのため、新しい機能の追加に対応できない可能性があります。また、古い技術によって、スケーラビリティやパフォーマンスの制約が生じる場合もあります。
メンテナンスや拡張がしにくい
レガシーシステムのメンテナンスは、通常、複雑でコストがかかります。また、古い技術やアーキテクチャをしていることにより変更や修正が容易でない場合があり、システムの保守が難しくなります。
セキュリティの脆弱性
レガシーシステムが最新のセキュリティ基準に対応していない場合、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが増加します。セキュリティの脆弱性が悪用されると、システムが停止したり、データが破壊されたりすることにつながり、ビジネスに深刻な影響が生じる可能性があります。
システムの属人化
レガシーシステムは数十年前に導入されたシステムであることが多く、仕様や開発言語を理解している人材が不足しているケースもあります。また、システムがブラックボックス化しているため、移行漏れや移行できない箇所が生じ、作業に時間がかかる可能性が高まります。
レガシーシステムの脱却方法
以降では、レガシーシステムから脱却のための3つの方法を紹介します。
モダナイゼーション
モダナイゼーションとは、レガシーシステムと化した企業の古い基幹システムなどのソフトウェアやハードウェアを、時代の要請に合わせて近代化することです。現行システムの機能を受け継ぎながら、システムを最適化できることがメリットです。
モダナイゼーションについては以下の記事で詳しく解説しています。
マイグレーション
マイグレーションとは、レガシー化したシステムを、新しい技術を取り入れたシステムに移行することです。
マイグレーションはゼロからシステムを構築するのではなく、システムの「移行」に主眼が置かれています。そのため、これまで蓄積してきたデータやアプリケーションなどの資産を引き続き活用できることがメリットです。
マイグレーションについては以下の記事で詳しく解説しています。
レガシーマイグレーションとは?目的・メリット・進め方をまとめて解説
以下の資料では、日本におけるレガシーマイグレーションの遍歴とその弊害について解説しています。あわせてご覧ください。
- 失敗から学ぶ!今、企業が取るべき
レガシーマイグレーション戦略とは - 1990年代、多くの企業はスクラッチ開発により基幹システムの構築を行いました。しかし、時間の経過につれて基幹システムはレガシー化し、企業はカスタマイズされたパッケージソフトやSaaSを導入することで、技術の進…
クラウドリフト・クラウドシフト
最後に紹介するのは、既存のレガシーシステムをクラウドに乗せ(リフト)、クラウドネイティブ化(シフト)を行う方法です。クラウドリフトとは、既存システムのままでオンプレミス型からクラウド型に最適化することです。このような最適化を行うことで、クラウドでの運用の基盤を作り、新システムへクラウドシフトしていくことでレガシーシステムからの脱却を進めることができます。
レガシーシステム脱却を妨げる2つの要因
レガシーシステムからの脱却が求められる一方で、それを阻むさまざまな要因があります。
以下では、レガシーシステム脱却を阻む要因のうち代表的なものを2つご紹介します。
オンプレミスやクラウドの乱立によるシステムのサイロ化
現在では多くの企業でクラウドサービスの利用が加速していますが、すべてのシステムがクラウド化しているわけではなく、オンプレミス型のシステムが残存し入り混じっているケースも珍しくありません。
さらに、クラウド型においてはプラットフォームを提供する「PaaS」や、ソフトウェアを提供する「SaaS」など、システムの形態が多様化しています。
多様なシステムが乱立した状態では、データの連携がうまく行われず、システムが孤立してしまう「サイロ化」状態に陥ってしまいます。サイロ化とは、本来有用なデータが分散した状態のままになってしまうため、結局一部のデータしか使われない状態です。
サイロ化していると、クラウド型、オンプレミス型のようにシステムが乱立したままになり、正しく活用できるビッグデータを形成することができなくなってしまうためです。これにより、企業データの価値が下がってしまう、データを活用するにも作業コストが上昇してしまうというようなデメリットが発生する可能性が高まります。
サイロ化を解消するためには、複数のアプリケーション開発基盤を1つに統合することや、他のシステムとデータ連携が可能なソフトウェアの導入を実施することが望ましいとされています。
レガシーシステム周辺で増加するEUCやアドオン
通常、システムを利用する際には、標準搭載されていない機能を補うため、必要に応じてEUCやアドオンの追加を行っています。
※(注釈)EUCとは 「End User Computing」(エンドユーザーコンピューティング)の略で、情報システム部門以外の現場にいる社員(エンドユーザー)が自分たちでシステム構築やプログラム開発などを実施することです。またアドオンとは、ソフトウェアに新たな機能を追加するためのプログラムを指します。
レガシーシステム利用時にもEUCやアドオンの追加は行われていますが、現場単位で生み出したEUCは複雑なものになってしまうことが多々あります。アドオンに関しても、無計画に追加され続けることで管理が煩雑になり、「アドオン地獄」のような状態に陥ることも少なくありません。
このようなアドオン地獄の状態については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
クラウド型ERP・CRM・SFAとスマートに連携。「aPaaS」という新たな選択肢
レガシーシステムからの脱却を検討する際、こうした複雑化したEUCなどの受け皿となる機能がないことで、思うように脱却が進まない可能性があります。
これらのレガシーシステム脱却を阻む要因はどのようにして解消すればいいのでしょうか。次章ではレガシーシステムの脱却を成功させるための戦略を実際の事例をもとにご紹介します。
事例からみる!レガシーシステム脱却を成功に導く戦略とは
ある金融企業の人事システムでは、汎用機スクラッチシステムに都度機能追加して利用していましたが、将来、社内外で通用する人材バリューの最大化を実現すべく、新人事制度を整備するとともに、次世代の人事基盤を構築する必要がありました。
そこで、人事システムを一元化できるSaaS型の新人事システムに刷新することを決断しました。
業務アプリは増え続ける前提でIT戦略の立案を
新人事システムの要件定義を行う中で、廃止不可、あるいは新システムへ移植できないレガシーシステム(周辺EUC)が乱立しシステムがサイロ化していることが判明し、そのEUCの受け皿のシステムをどうすべきか課題がありました。
またEUC以外にも、人事系だけで200以上のシステムが存在することも判明し、必要かどうか判断すべきシステムの数が膨大である状態でした。さらに現場からは、現行EUCだけでなく、新規EUCの実現要望もあがっている状況でした。
このような状況から、金融企業はEUCが増え続けることを前提とした、不要になった部分を廃止し、必要な分だけ作るプラットフォームを準備したほうがよいと考え、プライベートAWS環境上に新しいEUC基盤を構築する方針を決定しました。
マイクロサービス技術の活用とそのメリット
EUC基盤構築には、システムがサイロ化することを予防し柔軟なアプリケーション開発ができる仕組みが必要であるため、マイクロサービス技術を検討することとなりました。マイクロサービス技術とは、小規模な別々のサービスをビジネスの機能に沿った部品として扱い、それらを組み合わせ連携させることで大きなアプリケーションやプラットフォームを構築する技術のことです。
マイクロサービスについては以下で詳しく解説しております。
マイクロサービスとは?DX実現へ導入が進む理由とモノリシックアーキテクチャとの比較
マイクロサービス技術を利用することで、大きなアプリケーション上でシステムを連携し、乱立を防げるため、サイロ化を回避できます。また、EUCの受け皿としての小さな部品(アプリケーション)を簡単に作ることが出来ます。
aPaaS活用とそのメリット
金融企業は、マイクロサービス技術を利用したEUC群開発のためのクラウドサービスとして、aPaaSの導入を決定しました。aPaaSとは、アプリケーション開発に必要な環境を提供できるクラウドサービスのことです。aPaaSを活用することで、設計、開発、デプロイといった工程を効率化できます。
また、業務アプリ以外を外部委託することで、増え続けるビジネス部門の要求にも対応可能となりました。
aPaaSの導入によって、同社では周辺EUCのレガシーシステム脱却が進み、新人事システム基盤の完成に向けて前進しています。
本事例で触れたaPaaSのような開発基盤・運用基盤サービスについては、以下の記事でご紹介しています。あわせてご覧ください。
ローコード開発・ノーコード開発・aPaaS・hpaPaaS とは?それぞれの特徴・違い・注意点などを解説
上記の事例にて、新しいEUC基盤構築のために採用されたaPaaSはラキールが提供しています。それが、日本初のデジタルビジネスプラットフォーム「LaKeel DX」です。
従来のシステム基盤から進化した「aPaaS」であるLaKeel DXは、部品化されたマイクロサービスを組み合わせることで、「アドオン地獄」のようなレガシーシステムの技術的負債を解消します。IT人材の人手不足にも対応し、レガシーシステムからの脱却が可能です。
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以下の資料では、スマートに機能を拡張しレガシーシステムからの脱却を実現するaPaaSについて解説しています。LaKeel DXをはじめとするaPaaSに興味をお持ちの方は、ぜひダウンロードのうえご覧ください。
- スマートに機能を拡張する
「aPaaS」とは - 多くの企業では「ERP一本化施策」を掲げていますが、日本においてはレガシーシステムで既に実現済みであった高度な自社業務への 適合を叶えるべく、多くのアドオンやカスタマイズが行われる傾向にあります。こうした背景…
また、以下の資料では、レガシーシステム脱却に失敗しないための最新手法を詳しく解説しています。
経営者やIT部門の担当者様必見の内容となっておりますので、システム移行をご検討の際にぜひお役立てください。
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