「コンポーザブル」とは?柔軟性と拡張性を追求するシステム開発
コンポーザブルとは、ITシステムやビジネスの構成要素を分解し、柔軟に変更したり組み合わせたりすることです。社会のデジタルシフトが進展する中で注目を集めている概念であり、システム開発における柔軟性と拡張性の両立を実現します。本記事では、コンポーザブルの基本的な概念やそのメリット、将来性について解説します。
- 目次
コンポーザブルとは
デジタル技術の進展に伴いビジネス環境が大きく変化する中で、ITシステムの構築において「コンポーザブル」という考え方が注目されています。本章では、コンポーザブルの意味やコンポーザブル・アーキテクチャと呼ばれる概念についてご紹介します。
コンポーザブルの意味
「コンポーザブル」(Composable)とは、英語で「組合せ可能な」という意味です。
ITシステムにおいては、「さまざまな要素や部品を組み合わせて、環境や状況に応じて柔軟に変更できるようにする」ことです。このためには、機能やコンポーネントが疎結合であり、相互に組み合わせ可能な状態である必要があります。
コンポーザブル・アーキテクチャとは
コンポーザブル・アーキテクチャとは、システムやアプリケーションを小さな機能単位のコンポーネントに分割し、必要に応じてそれらを組み合わせて構築できるようにするアーキテクチャのことです。
システムやアプリケーションの機能が一枚岩のように一体化している従来型の「モノリシック」な状態では、変更や拡張が難しく、障害の影響が全体に及びやすいという課題がありました。一方、コンポーザブル・アーキテクチャでは、各機能やコンポーネントを個別に開発し、コンポーネント単位で変更を加えることで、変化に強く、かつ迅速で効率的なシステム構築・運用を実現できます。また、コンポーネント単位での開発により、システム開発に高度なスキルが求められる部分を減らすことができ、限られた人的リソースでも高品質なシステムを構築しやすくなります。
また、コンポーザブル・アーキテクチャはマイクロサービスと密接な関係にもあります。
マイクロサービスとは、システムを小さな疎結合のサービスに分割し、それぞれが独立して開発、デプロイ、スケールできるアーキテクチャのことです。マイクロサービスは、コンポーザブル・アーキテクチャを実現するための具体的な設計手法の1つといえます。
マイクロサービスの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
- マイクロサービスとは?DX実現へ導入が進む理由とモノリシックアーキテクチャとの比較
- 近年、ソフトウェアのアーキテクチャとして「マイクロサービス」が注目されており、DX実現に向けて大手企業でも導入が進んでいます。マイクロサービスとは具体的にどのようなアーキテクチャであり、どういったメリットがあ…
また、「コンポーザブル」の考え方に基づく開発手法である「コンポーネント型開発」や、これらと関連する「ソフトウェアの部品化」については下記の記事で解説しています。
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コンポーザブルが登場した背景とその重要性
「コンポーザブル」という概念が重要になっている背景としては、以下の要因が挙げられます。
1つ目は、コロナ禍を契機としてデジタル化が大きく進展したことです。ビジネス環境の先行きが不透明になるなか、ビジネスモデルを柔軟に変化できることが必要になります。デジタル領域においても、ビジネスモデルの変化に応じた柔軟性が必要に迫られています。モノリシックなアーキテクチャでは変化への迅速な対応に限界があるため、柔軟かつスピーディーに開発できるコンポーザブル・アーキテクチャが求められています。
2つ目は、デジタルに精通した人材の不足です。高度なスキルを持つ人材は特に確保するのが難しくなっており、開発メンバーの人数やスキルの面で限られたリソースを有効活用して、高品質なシステムを構築する必要性が高まっています。コンポーザブル・アーキテクチャであれば、既存のコンポーネントを組み合わせることで新しい機能やシステムを構築できるため、高度なスキルがなくても迅速に開発を進めることができます。
3つ目は、デジタルサービスやツールの多様化です。APIやマイクロサービス、クラウドプラットフォームなど、コンポーザブルな構成要素が増えたことで、必要な機能を組み合わせてシステムを構築しやすくなっています。こうした環境変化に呼応して、企業の設立や社内ベンチャープロジェクトの立ち上げなどを迅速化するうえでも、コンポーザブル・アーキテクチャの重要性が高まっています。
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コンポーザブルなシステムのメリット
コンポーザブルなシステム開発のメリットとしては、主に以下の4つがあります。
変化への対応力が向上する
モノリシックなシステムに比べ、コンポーザブルなアーキテクチャではシステムの機能単位を分割・疎結合化できるため、柔軟性や拡張性が向上します。これにより、急速な事業環境の変化にも迅速に対応できるようになります。
さらに、必要に応じてコンポーネントを追加・変更できるため、ビジネスニーズに合わせたカスタマイズも容易です。
開発を効率化し、工数や費用を削減できる
スクラッチ開発とは異なり、コンポーザブルなアーキテクチャではゼロからシステムを構築するのではなく、必要な機能をAPIやマイクロサービスなどの再利用可能なコンポーネントから組み合わせて構築可能です。これにより開発が効率化され、工数や費用の削減につながります。
障害が発生しても局所化できる
モノリシックなシステムでは、一部の障害が全体に波及しやすいのに対し、コンポーザブルなアーキテクチャでは各コンポーネントは他のコンポーネントと疎結合であり、問題が発生した箇所を修正しやすいメリットがあります。そのため、障害の影響を局所化でき、システム全体の安定性が高まります。
高度なスキルを持つエンジニアでなくても開発しやすい
コンポーザブルなアーキテクチャでは新規で開発をしなければいけない部品の数を最小限にすることができます。また、部品同士の組み合わせが比較的単純であるため、開発者は必要な部品を選択しやすく、それらを組み合わせることでシステム全体を構築できます。
従来の開発と比較しそこまで高いスキルが求められないので、高度なスキルを持つ人材の獲得が難しい企業にとって大きなメリットの1つです。
コンポーザブルの将来性について
コンポーザブルを活用した開発は今後ますます主流になると予想されます。
また、デジタル技術の進展に伴い、今後はコンポーザブルなシステムやアプリケーションの構築・管理を自動化する技術が進化していくことが予想されます。例えば、AIを活用してコンポーネントの選択や組み合わせを最適化することができるようになる、といったことが一例です。
こうした可能性を実現するツールとして LaKeel DX があります。
LaKeel DX は、マイクロサービス技術を活用したアプリケーション開発・運用プラットフォームであり、ソフトウェアを機能ごとに独立した部品に分割し、それらを組み合わせるコンポーザブルな開発が可能です。一度作った部品は別のシステムに再利用ができるため、開発生産性と品質の高さを両立できます。
ローコードでの開発ツール「LaKeel Component Studio」も提供しており、IT知識のない業務部門のユーザーが必要な部品を組み合わせて画面を作成し、複雑な部品は情報システム部門の担当者が開発するなど、自由度の高いアプリケーション開発も可能です。
また、「LaKeel Component Studio」の新機能として、無数の部品からAIが適切な部品を選択したり、レイアウトや色を補正することで、業務に必要なシステム開発の自動化に貢献します。
LaKeel DX の詳細については下記のページをご覧ください。
- LaKeel DX
- LaKeel DXは、企業のDXを成功へ導くクラウド型アプリケーション開発・運用基盤です。 LaKeel DXは、変化の激しい時代において、大規模な組織・大企業が直面しているさまざまなIT課題を解決します。
このコラムを書いたライター
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